歴史からビジネスを学べるか?
歴史上の事件を一つ挙げて、「その出来事からこんなビジネスの秘訣が得られますよ」というタイプの解説。
これは、よくビジネス書などに出てくるパターンです。
その解説には、織田信長や源義経、坂本竜馬など、歴史上の有名どころが登場し、その人物が活躍したとされる逸話が語られます。
また、歴史を学ぶ価値を訴えるために「歴史を学ぶことは現代のビジネスにも通じるものです」と語られることもあります。
しかし、そこに「ちょっと待った」と言いたいのです。
史実の信ぴょう性は?
奇襲戦法が功を奏したとされる、源義経の『鵯越の逆落とし』や織田信長の『桶狭間の戦い』。
弱者が強者と戦う秘訣や、敵の油断を突く大逆転劇として語られます。
確かに、その話を耳にすれば、弱者が強者に対してビジネス上で立ち向かうには“奇襲戦法”が有効であると思えてくることでしょう。
また、その奇襲戦法の成功から、天下取りへとつながったような印象まであります。
しかし、その話が実話であったならまだしも、作り話だったらいかがでしょうか。
歴史学においては、少し前までは史実とされていたものが、「実は違っていた」と急転することがよくあります。
聖徳太子の名が歴史の教科書から消えた件が有名で、一万円札の顔にまでなった有名な歴史上の人物が、「存在しなかったのではないか」と考えられるようになったのです。
そして、源義経の『鵯越の逆落とし』も、疑わしいとの声があります。
科学的証拠がなく、実証も不可能
歴史以外の社会学では、各国の貿易の様子や特産品、社会構造など、調べれば実証できる内容です。
しかし、歴史学では『出土品や文献に記されている』を証拠とするしかなく、複数の文献を突き合わせて整合性があれば、「それは史実であろう」と推定するわけです。
もちろん、科学的にはそのようなものは全く証拠能力がありません。
たとえば、今から1万年後の日本で、西暦2000年前後のものと思われるいくつかの文献が発掘されたとしましょう。
もしも、それらの文献に共通して『仮面ライダー』について記されていたら、1万年後の歴史学者は「警察組織に代わって犯罪を取り締まる“仮面ライダー”という役職が存在した」と解釈するかも知れません。
歴史上の逸話と現実のビジネス
源義経の『鵯越の逆落とし』や織田信長の『桶狭間の戦い』などの逸話から奮起して、ビジネス上で奇襲戦法を行った結果、「大手企業に多少は痛手を負わせたものの、大がかりな反撃をうけて倒産しました」ということにならないように。
創作に基づく現実論は危ういのです。
まとめ
『歴史を学ぶことによって今を知る』と言われることがあります。
しかし、ビジネスにおいてそれは有効でしょうか。
源義経は『鵯越の逆落とし』で源平合戦の運命を変えた。
織田信長は『桶狭間の戦い』で勝てるはずのない戦いに勝利した。
このような話は魅力的で夢がありますが、それを現代ビジネスに持ち込んでも成功するとは思えません。
そもそも、その史実とされているエピソードは、本当にあった出来事なのかが疑わしいものなのです。
それは空想に基づいて現実を計るような過ちを犯している可能性があります。